かたいグミおいしい

やわらかいグミもおいしい

「pixivはいつでも投稿画像をつかって画像生成AIサービスを作れる」は本当なのか

はじめに

昨今、画像生成AIとクリエイターとの間に緊張が高まっているように見受けられます。特にpixiv等の一部の画像投稿サイトにおいては、学習用データとして利用されることを避けるべく、ユーザーが掲載していた画像を非公開・削除する動きが見られます*1。その中で、一部から「pixivにこのまま自分の作品を残しておくと勝手にpixivが行う画像生成AIサービスのために使われてしまう」*2という懸念の声が上がっています。しかし、これは現状の規約に照らして正しいのでしょうか?

pixivの規約がどうなっているか

規約は、サービスを利用するにあたってユーザーとサービス提供側が交わした約束事(契約)ですので、ユーザーだけでなく、サービス提供側も規約に縛られることになります。

pixivの規約では、第21条において、ユーザーが投稿したイラスト(投稿情報)の権利が誰に帰属するか、pixivが投稿イラストをどのように使うことができるかということについて書かれています。

第21条 知的財産権の帰属及び使用許諾
2. 本サービスを利用して投稿等された投稿情報の知的財産権その他一切の権利は、当該投稿情報を創作したユーザーに帰属します。但し、明示的に定めがある場合は、ユーザーから当社に対して権利を譲渡していただく場合があります。3. ユーザーは、当社に対し、ユーザーの投稿情報について以下の利用行為等を許諾します。
    1. 当社および当社の許諾する第三者が、ユーザーの投稿情報を、本サービスの円滑な提供、利用促進、広告・宣伝、当社システムの構築、改良、メンテナンスに必要な範囲内で、無償かつ非独占的、永続的に使用、利用(利用目的に照らして必要な限度の改変を含みます。)および実施等をすること。例えば、当社はユーザーの投稿情報を本サービスの宣伝や紹介を目的として、TwitterFacebookInstagramなどのpixiv公式SNSアカウントや、当社の運営するwebサイト、または当社の作成する資料等に掲載・転載することができます。
    2. 当社が、pixivおよび個別サービス、ならびに当社提携サービスにおいて投稿情報が閲覧できるようにする機能を提供すること。投稿情報は、当該サービスで提供される表示形態に合わせ加工されることがあります。当社は、当該投稿情報を投稿したユーザーに対し、その投稿情報が当該サービスでどのように表示されるか確認できる手段と、それに対するお問い合わせ窓口を用意いたします。

まず、pixivにおいては、投稿したイラストの著作権はユーザーに保持されたままです(規約21条2項)*3

また、pixivは、サービス運営のために一定の範囲で画像を利用することをユーザーから許諾してもらっています(規約21条3項)。あまり意識していないかもしれませんが、pixivに利用登録をした時点で、著作権者であるユーザーは、規約に書いてある範囲の利用をpixivに「やっていいですよ」と許可しているわけです。

そして、ユーザーが許可を与えているのは以下の行為のみです*4

  1. pixivまたはpixivの下請企業が、pixivの円滑な提供・利用促進・広告宣伝、システムの構築・改良・メンテナンスのために必要な範囲で利用する(23条3項1号)
  2. pixiv・pixiv関連サービス・提携サービスにおいて投稿情報が閲覧できるようにする機能を提供するために利用する(23条3項2号)

上記のどの記述にも、「新機能である画像生成AIのために学習用データとして投稿画像を利用する」という利用態様は含まれないと考えるのが素直です。

そうすると、ユーザーは、pixivに対しては規約で書かれている以外の利用を許諾していない以上、画像生成AIの学習用データとしての利用は許諾していないということになります。

法律と規約どちらが優先するか(オーバーライド問題)

 「AIの学習に使うことは著作権法で認められているのに、約束事にすぎない規約によって制限されることなんかあるの?」と思う方がいらっしゃるかもしれませんので、少しだけ上記点について書きます。

 著作物は、一定の範囲であれば著作権者の許諾なしに利用することができます(権利制限規定)。私的複製(著作権法30条)とか、引用(著作権法32条)なんかがそうです。AIの学習に用いることも、この権利制限規定(著作権法30条の4第2号)で認められています。

 規約でAI学習を制限するということは、この法律を規約で上書き(override)することと同義ですが、現在のところは、権利制限規定の性質に応じて個別に考えようということになっております。そして、著作権法30条の4についてオーバーライドが認められるかについては確立した議論はないものの、私見としては、有効と考えても差し支えないように思います。

なお、オーバーライド問題に関する議論を追いたいという方は、私のボスが書いた

storialaw.jp

をご参照ください。

まとめ

  • pixivは今のところ画像生成AIを作る気はなさそう
  • 規約上も、画像生成AIの学習用データとして利用することは許容されていない可能性が高い
  • 著作権法との優劣関係が問題になるけど、規約が優先すると考えてよいのでは(私見

*1:イラストレーターたちがAI学習に抗議運動 pixiv上の作品を非公開に - KAI-YOU.net ただし、日本においては学習目的で著作物を利用することは完全に合法(著作権法30条の4第2号)であり、無断転載サイトを含めたpixiv以外のサイトから学習される可能性は残ります

*2:現時点においては、関連サービスであるpixivfanboxにおいてAI作品マネタイズを禁止する予定のようですので AI生成作品に対する、FANBOXにおける今後の対応|pixivFANBOX公式|pixivFANBOX、画像生成AIがpixivから出てくることはいったんなさそうです

*3:サービスの内容によっては、投稿情報の著作権がサービス側に渡るものもありますが、イラスト投稿サイトにおいては投稿イラストの著作権がサービス側に渡るというケースは少ないかと思われます

*4:一応、これが例示列挙だと考える余地もなくはないと思いますが、限定列挙であると考えるのが自然なように思います

画像生成AIとわいせつ性について

はじめに

せっかくブログがあるのに使わないのもあれなので、定期的になにか書こうと思います。

で、何について書こうかと考えていたところ、Twitterあたりで画像生成AIがエッチな画像を出力した場合にどうなるんだ、刑法に抵触するんじゃないのか、という話が展開されていたのを見ましたので、それについて書いてみることにします。

論点の整理

この問題は2つの別個の論点を含んでいるため、分けて考える必要があります。

すなわち、

①実際に出力された画像が、「わいせつな…図画」(刑法175条)にあたるか

②①が肯定されたとして、生成モデル提供者に対し刑事罰が課せられるか

という論点です。

①画像のわいせつ性について

「わいせつ」の意味について、古い判例では「徒らに性慾を興奮又は刺激せしめ且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反する」*1ものがわいせつだと定義づけられています。

…これ、意味わかります?私はいまだによく意味がわかってないです。司法試験本当に受かったのか不安になってきた*2。「善良な性的道義観念」って何なんですかね。

このとき問題になった記事の内容ですが、判決文によると

被告人は、第一「好色話の泉」と題した男女の性交並びに男女陰部を表現した、戲文等の記事を、第二「其の夜我慾情す」と題し死女を姦淫する光景を、また、「変態女の秘戲」と題し変態女の性交を夫々詳述した記事を、第三「処女の門、十七の犀ひらかる」と題する男女性交の光景を記述した記事を夫々掲載した新聞各一万二千部づつを販売した

というものらしく、ネクロフィリアはまあまあアブノーマルな性癖*3ですし、「変態女の秘戲」って書いてあるぐらいだからまあ変態ではあるのかなと思いますが、男女の性交を表現した記事なんてこの世には溢れてる気もしますし、線引きがよくわかりません。

ただ、最高裁が具体的に何を問題にしていたかというのは、「チャタレー夫人の恋人」事件*4の判決文で一部明らかになりますので、こちらが手がかりになるかもしれません。

およそ人間が人種、風土、歴史、文明の程度の差にかかわらず羞恥感情を有することは、人間を動物と区別するところの本質的特徴の一つである。…
 …要するに人間に関する限り、性行為の非公然性は、人間性に由来するところの羞恥感情の当然の発露である。かような羞恥感情は尊重されなければならず、従つてこれを偽善として排斥することは人間性に反する。
 ところが猥褻文書は性欲を興奮、刺戟し、人間をしてその動物的存在の面を明瞭に意識させるから、羞恥の感情をいだかしめる。そしてそれは人間の性に関する良心を麻痺させ、理性による制限を度外視し、奔放、無制限に振舞い、性道徳、性秩序を無視することを誘発する危険を包蔵している。もちろん法はすべての道徳や善良の風俗を維持する任務を負わされているものではない。かような任務は教育や宗教の分野に属し、法は単に社会秩序の維持に関し重要な意義をもつ道徳すなわち「最少限度の道徳」だけを自己の中に取り入れ、それが実現を企図するのである。刑法各本条が犯罪として掲げているところのものは要するにかような最少限度の道徳に違反した行為だと認められる種類のものである。性道徳に関しても法はその最少限度を維持することを任務とする。そして刑法一七五条が猥褻文書の頒布販売を犯罪として禁止しているのも、かような趣旨に出ているのである。

要するに、エッチなものは規制しないと、それに触れた人がハジケリスト*5になってしまって社会が維持できなくなるので刑事罰で規制しないといけないんだ、ということのようです。

私は自分のことをまあまあな左翼だと思っていますので、上記のような文章を見ても「何言ってんだこいつ」としか思いませんが、最高裁がこう考えている以上、仕事として留意しなければいけないわけです。

じゃあ具体的にどういう表現が社会を頽廃させる危険があるんですかね、という話になりますが、最高裁は「四畳半襖の下張」事件*6でもう少し具体的な基準を出しています。

文書のわいせつ性の判断にあたつては、当該文書の性に関する露骨で詳細な描写叙述の程度とその手法、右描写叙述の文書全体に占める比重、文書に表現された思想等と右描写叙述との関連性、文書の構成や展開、さらには芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の程度、これらの観点から該文書を全体としてみたときに、主として、読者の好色的興味にうつたえるものと認められるか否かなどの諸点を検討することが必要であり、これらの事情を総合し、その時代の健全な社会通念に照らして、それが「徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」(前掲最高裁昭和三二年三月一三日大法廷判決参照)といえるか否かを決すべきである。

考慮要素はある程度見えてきた気がしますが、この中の「その時代の健全な社会通念に照らして」という記述が曲者です。

要するに、最高裁は、「わいせつ」かどうかはその時代の価値観に合わせて異なりうるということを言っているわけです。実際にも、同じ写真家の写真について、平成11年*7と平成20年*8で結論が異なったケース*9がありますし、「チャタレイ夫人の恋人」も、「四畳半襖の下張」も、今では普通に読むことができます。

また、現状性器部分にいわゆるモザイクがかかったものが広く流通しています(=「わいせつ」ではないとされている)が、上記の基準を見てもらえばわかるとおり、はっきりと「性器が隠れていればOK」とされているわけではありません。判例上も、性器は消されていたものの、消しが甘く、かつ芸術的価値はないとしてわいせつと判断されたケース*10があります。

②違法行為を惹起するツール提供者の責任について

「違法行為を実行可能にするツール提供者が責任を負うか」という論点についてですが、殺人犯が使った包丁を売っているホームセンターが逮捕されないのと同様に、基本的にはネガティブに考えられています。

ツール提供者の刑事責任が問われたものとして、Winny事件*11が参考になります。本件は、P2Pファイル交換ソフトであるWinnyの開発者が、Winny上で権利者の許諾を得ずに著作物が送受信されていたことについて、幇助犯としての責任を負うかということが問題になった事件です。

Winnyは,1,2審判決が価値中立ソフトと称するように,適法な用途にも,著作権侵害という違法な用途にも利用できるソフトであり,これを著作権侵害に利用するか,その他の用途に利用するかは,あくまで個々の利用者の判断に委ねられている。また,被告人がしたように,開発途上のソフトをインターネット上で不特定多数の者に対して無償で公開,提供し,利用者の意見を聴取しながら当該ソフトの開発を進めるという方法は,ソフトの開発方法として特異なものではなく,合理的なものと受け止められている。…かかるソフトの開発行為に対する過度の萎縮効果を生じさせないためにも,単に他人の著作権侵害に利用される一般的可能性があり,それを提供者において認識,認容しつつ当該ソフトの公開,提供をし,それを用いて著作権侵害が行われたというだけで,直ちに著作権侵害の幇助行為に当たると解すべきではない。…

幇助犯が成立するためには,一般的可能性を超える具体的な侵害利用状況が必要であり,また,そのことを提供者においても認識,認容していることを要するというべきである。すなわち,ソフトの提供者において,当該ソフトを利用して現に行われようとしている具体的な著作権侵害を認識,認容しながら,その公開,提供を行い,実際に当該著作権侵害が行われた場合や,当該ソフトの性質,その客観的利用状況,提供方法などに照らし,同ソフトを入手する者のうち例外的とはいえない範囲の者が同ソフトを著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められる場合で,提供者もそのことを認識,認容しながら同ソフトの公開,提供を行い,実際にそれを用いて著作権侵害(正犯行為)が行われたときに限り,当該ソフトの公開,提供行為がそれらの著作権侵害の幇助行為に当たると解するのが相当である。

すなわち、ツール提供者が幇助犯にあたるのは、

①ツールを使って現に行われる違法行為を認識認容しながら(抽象的な違法行為への利用可能性では足りない)公開提供を行い、または

②ツールを利用する者のうち例外的とは言えない範囲の者が違法行為に利用する蓋然性が高く、かつ提供者もそのことを認識認容していて、

③実際に違法行為がなされた場合

となります。

Winny判決においては、まず①が否定されています。

また、被告人となった開発者が、掲示板において「もちろん,現状で人の著作物を勝手に流通させるのは違法ですので,βテスタの皆さんは,そこを踏み外さない範囲でβテスト参加をお願いします。これは FreenetP2P が実用になるのかどうかの実験だということをお忘れなきように。」と発言していたこと等が認定され、②のうちの提供者の認識認容があったとはいえないとされています。

モデルを公開するときはどうすればいいのか

①についてですが、現在の日本の現状を考えたとき、少なくとも一般に流通しているアダルトビデオ等と同様レベルで性器が隠れているのであれば、出力画像が「わいせつ」にあたるとして摘発される可能性は限りなく少ないと思われます。とはいえ、理屈として「100%大丈夫です」と言い切れない面はあります、というのは上述のとおりです。

②について、モデル開発者としては、まず「わいせつ」にあたるような画像が出力される蓋然性が高いといえるようなモデルにならないよう留意することが考えられます。

  • Stable diffusionのように、NSFWなワードをTxt2Imgの入力としてそもそも入れられないようにシステムで制御する
  • 開発段階でデータセットに「わいせつ」に該当するような画像を含めない

という対応がありうるかと思います。

また、モデルを利用する者のうち例外的とは言えない範囲の者が違法行為を行うことを認識認容していた、といわれないために、

  • 規約等で「わいせつに該当するような画像を出力せず、万が一意図せず出力されてしまった場合も削除等適切な対応を行う」ことを求める

等が考えられる対応かと思います。

*1:最判昭和26.5.10刑集5.6.1026

*2:弁護士あるあるとして、「司法試験に落ちる夢をよく見る」というのがあるのですが、私は一度も見たことがないです。不安要素が追加されてしまった。

*3:あくまで私見です

*4:最判昭和32.3.13刑集11.3.997

*5:わからない人は『ボボボーボ・ボーボボ』全21巻を読んでください。たぶん読んでもわからないと思います。

*6:最判昭和55.11.28刑集34.6.433

*7:最判平成11.2.23集民191.313

*8:最判平成20.2.19民集62.2.445

*9:厳密に言うと、関税法上の「風俗を害すべき書籍・図画」に該当するかどうかが争われたもので、刑法175条が直接問題となったわけではありません

*10:最判昭和58.3.8刑集37.2.15

*11:最判平成23.12.19刑集65.9.1380

旋律を変更しないカバー楽曲の取り扱いについて #裏legalAC

【本記事は、裏法務系 Advent Calendar 2021のエントリになります】

adventar.org

 

お疲れ様です。兄弁である山城からバトンを受け継いだ坂田と申します。個人情報保護法については、未だダニングクルーガー効果の最初の坂すら越えられていません。皆様いかがお過ごしでしょうか。早いもので弁護士になって1年が経過してしまいました。ついこの間まで胡乱な目をしながら鴨川流域を徘徊していたように記憶しているのですが、時が経てば人も変わるということなのでしょうか。

 

さて、世間にはアドベントカレンダーなるものがあると聞きます。

ja.wikipedia.org

このような小洒落た習慣には馴染みがない生活を送っていたので今でもよくわかっていないのですが、どうやらクリスマスまで1日1回カレンダーを開けていくようです。そして、お菓子の代わりに法律系の記事を1日1記事リレー形式で執筆・公開していくのが「法務系 Advent Calendar」企画ということのようです*1。自分が参加している企画なのに何一つはっきりわかっていません。

わけもわからずエントリーした後に前方を兄弁、後方を著作権法の大家*2に挟まれていることに気づいてしまい、これは大変なことになってしまったと頭を抱えているところです。

とはいえ何も書かないわけにはいきませんので、かねてより疑問に思っていた点について書かせていただきたいと思います*3。ご笑覧いただければ幸いです。

はじめに

いわゆるカバー楽曲が作成される際、通常は編曲権及び同一性保持権が問題となるとされます*4

ただ、楽曲の権利処理が行われる際、理論上どのような根拠で上記処理が行われているかについては不透明な部分が多く、業界慣習で動いている面も多くあるようです*5

本稿では、特に旋律を変更しないカバー楽曲の取り扱いについて、音楽の三要素についての裁判例整理を概観しつつ、取り扱いの理論的根拠やどのような取り扱いが望ましいかについて整理したいと考えています。

音楽の要素についての概観

先に述べたとおり、音楽論の世界では、一般に音楽の三要素として、「旋律(メロディ)・和声(ハーモニー)・節奏(リズム)」が挙げられます*6

まず、楽器を持たない太古の人類は、身の回りの物や自らの身体を叩いたり、声を出したりすることによって、自然に生まれる音以外の音声を生み出していたと考えられます。「どのタイミングで音を出すか」が考えられたことにより、この世界に節奏(リズム)が生まれました*7

さらに、音が長く連なるにつれて、「どこからどこまでの音をひとまとまりと考えるか」という概念が生まれます。これが旋律(メロディ)の誕生です。

また、2つの音を同時に出すと、心地いい響きになる時とぎこちない響きになるときの二通りがあることがわかってきました。どうもこれは音の高さに関係しているらしい、ということで、和声(ハーモニー)が生まれます。

以上からみていくと、旋律・和声・節奏が、音楽の最も基礎的な要素であることは間違いなさそうです。それでは、法学における通説・裁判例では、音楽の要素はどのように取り扱われてきたのでしょうか。

判例・通説にみる音楽の著作物の要素・規律

音楽の著作物とは何か

著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)をいいます。

音楽の著作物もこの一種ですので、さしあたり、「音によって思想または感情が創作的に表現された著作物」ということができます。

ここで、音楽の著作物とは、実際の演奏・歌唱によって具体化される抽象的存在であると解されています。すなわち、実際の演奏や歌唱は、音楽の著作物の「実演」であって、音楽の著作物そのものではないとされています*8

判例上の音楽の著作物の要素

ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件

まず、音楽の著作物の要素について判示した著名な裁判例として、ワン・レイニーナイト・イン・トウキョー事件(東京地判昭43.5.13下民集19.5=6.257)がありますので、簡単に紹介します。

「音楽が旋律、和声、節奏、形式の四要素から成ることは原告といえども否定しないところであつて、音楽がかような四要素から成立し、これらが一体となつて一個の楽曲を形作つている以上、二つの楽曲の同一性を考えるに当つては、これらすべての要素を考慮に入れて判断を下すのが相当であると考える。もつとも、音楽といつてもさまざまなものがあり、そのうちには古は判例に現われた浪花節のように形式や和声など問題にならず、節奏さえも重要でなく、ただ旋律だけが主要な要素であるものもあるから、かような楽曲を比較する場合には旋律だけを考えれば足りることになる。…かような見地からすれば、A楽曲とB楽曲とを比較するに当つては、音楽の四要素のうちどれが重要でありどれが重要でないかも当然問題とされなければならない…」

東京地裁は、音楽の要素として旋律(メロディ)、和声(ハーモニー)、節奏(リズム)、形式の4要素を挙げており、これは先に挙げた音楽側からの整理とも基本的に整合しています。おそらく、これが初めて音楽の要素についての判示がされた裁判例です。

記念樹事件地裁判決(東京地判平12.2.18判タ1024.295)

それでは、裁判例においては、音楽の要素としてどれが最も重要な要素であるとされてきたのでしょうか?これについて判断した著名な裁判例として、記念樹事件があります。

「甲曲はいわゆるコマーシャルソングであり、乙曲は唱歌的なポピュラーソングであって、両曲とも、比較的短くかつ分かり易いメロディーによって構成されているものと認められるから、両曲の対比において、第一に考慮すべきものは、メロディーであると認められる
しかしながら、証拠(乙五、六、一六)と弁論の全趣旨によると、音楽は、メロディーのみで構成されているものではなく、和声、拍子、リズム、テンポといった他の要素によっても構成されているものと認められ、前記第二の一(争いのない事実等)1、2に弁論の全趣旨を総合すると、両曲とも、これらの他の要素を備えているものと認められる。
そうすると、両曲の同一性を判断するに当たっては、メロディーの同一性を第一に考慮すべきであるが、他の要素についても、必要に応じて考慮すべきであるということができる…」

この判決は、「類似性判断にあたっては旋律を重視することを明らかにした裁判例」であると説明されることがあります。しかし、判示を注意深く読むと、東京地裁が旋律を重視すべきであるといったのは、あくまで具体的事案に即した判断であることがわかります。このことは、次の高裁判決でより鮮明になります。

記念樹事件高裁判決(東京高判平14.9.6判タ1110.211)

「一般に、楽曲の要素として、旋律(メロディー)、リズム及び和声(ハーモニー)をもって三要素といわれることがあり、また、場合によってはこれに形式等の要素を付け加えて、これら全体が楽曲に欠くことのできない重要な要素とされていることは、当審証人日暮禮子や控訴人小林自身の著書…によっても認められるところである。
そして、一般に、楽曲の本質的な要素が上記のような多様なものを含み、また、それら諸要素が聴く者の情緒に一体的に作用するのであるから、それぞれの楽曲ごとに表現上の本質的な特徴を基礎付ける要素は当然異なるはずである。そうすると、具体的な案を離れて『表現上の本質的な特徴の同一性』を論ずることは相当でないというべきであり、原曲とされる楽曲において表現上の本質的な特徴がいかなる側面に見いだし得るかをまず検討した上、その表現上の本質的な特徴を基礎付ける主要な要素に重点を置きつつ、双方当事者の主張する要素に着目して判断するほかはない

高裁判決は、「音楽の要素のうち、何が本質的特徴となるか」「本質的特徴と関連する音楽の要素はなにか」は、個々の楽曲によって異なる旨を明確に判示しています。

ただし、高裁判決は、通常の楽曲の場合は、旋律を重視すべきケースが多いことも同時に言及しています。こうして、裁判例の潮流としては、旋律を重視するという流れが確立したといえます。

「もっとも、…旋律は、例えば浪曲のように単独でも音楽の著作物(楽曲)として成立し得るものである上、旋律自体を改変することなく、これに単に和声を付するだけで、旋律のみから成る原著作物の表現上の本質的な特徴の同一性が失われることは通常考え難いところである。これに対し、和声は、旋律を離れて、それ単独で『楽曲』として一般に認識されているとは解されず、旋律と比較して、著作物性を基礎付ける要素としての独自性が相対的に乏しいことは否定することができない。そして、このことは、打楽器のみによる音楽のような特殊な例を除いて、リズムや形式についても妥当するものと解される。そうすると、楽曲の本質的な特徴を基礎付ける要素は多様なものであって、その同一性の判断手法を一律に論ずることができないことは前示のとおりであるにせよ、少なくとも旋律を有する通常の楽曲に関する限り、著作権法上の『編曲』の成否の判断において、相対的に重視されるべき要素として主要な地位を占めるのは、旋律であると解するのが相当である」

また、高裁判決は、編曲権(著作権法27条)についても詳細な判断をしています。

「『新訂 標準音楽辞典』においては、『(1)楽曲の本来の形から、通常、原曲の実体の本質をできるだけそこねずに、他の演奏形態に適するように改編することをいう。大規模な編成を小編成に改める場合編曲者の創作の入る余地はない。また演奏上の目的で行われる改編もあり、その場合は、編曲者による創作的要素が加わることが多い。たとえば、旋律だけの原形に伴奏を付加したり、まったく異なった楽器編成に改めたり、小規模な編成の楽曲を大編成に書き改めたりする場合などが含まれる。異なった編成への編曲を〈トランスクリプション〉とよぶこともある。(2)ポピュラー音楽やジャズでは、旋律や和声の特定の解釈をいう。…普通このような場合では、作曲家の役割は旋律を指定し、簡単に伴奏の和声を示すことだった。そして編曲者に演奏形態やオーケストレーシヨンに関して自由裁量を残し、リズムや和声の細目についてはまかせている』とされているが、上記(1)の例として挙げられている『大規模な編成を小編成に改める場合』などは、著作権法上はむしろ『複製』の範ちゅうと解されるものであり、結局、一般用語ないし音楽用語としての『編曲』が著作権法上の『編曲』と必ずしも一致するものとはいえない。」

高裁判決は、一般的な用語としての「編曲」と著作権法上の「編曲」が必ずしも一致しないことを明らかにしました。すなわち、27条の権利は、いずれも新たな創作性が付与されることを前提としていることから、編曲者が創作的要素を付加していなければ、著作権法上の「編曲」にあたることはない、と判断したものと考えられます。

しまじろうのわお!事件(知財高判平28.12.8)

近時の裁判例として、しまじろうのわお!事件を紹介します。

「楽曲についての複製,翻案の判断に当たっては,楽曲を構成する諸要素のうち,まずは旋律の同一性・類似性を中心に考慮し,必要に応じてリズム,テンポ等の他の要素の同一性・類似性をも総合的に考慮して判断すべきものといえるから,原告楽曲と被告楽曲のテンポがほぼ同じであるからといって,直ちに両楽曲の同一性が根拠づけられるものではない。
そして,上記で述べたとおり,両楽曲は,比較に当たっての中心的な要素となるべき旋律において多くの相違が認められることから,被告楽曲から原告楽曲の表現上の特徴を直接感得することができるとは認め難いといえる。
他方,両楽曲のテンポが共通する点は,募集条件により曲の長さや歌詞等が指定されていたことによるものと理解し得ることから,楽曲の表現上の本質的な特徴を基礎づける要素に関わる共通点とはいえないのであって,上記判断を左右するものではない。」

同事件においては、「旋律を重視すべき」という規範が一般論に出世しています。本件はテンポがほぼ同一であった事案でしたが、その点は本質的特徴ではないとされました。

具体的事案における処理

以上のように、音楽の著作物の本質的特徴については、まずは旋律を中心に判断するという実務がほぼ確立しているといえます。すみません、ここまでは前説なんです。もうしばらくお付き合いください。

そして、いわゆる編曲が行われる際、編曲を以下の2パターンに分類して説明されることがあります*9

旋律・歌詞が変更されないカバーアレンジ

この場合には、音楽出版社著作権者)の許可だけで可能である。すなわち、楽曲の著作者は、基本的な歌詞及び旋律しか決定していない*10ことが通常であるから、歌詞・旋律が変更されていない場合には、著作者の許諾を得る必要はない。

旋律・歌詞が変更されるカバーアレンジ

この場合には、音楽出版社に加えて著作者人格権の処理も必要である。なぜなら、楽曲の著作者が創作行為に関与している旋律・歌詞が変更されているためである。

疑問点

ようやく本論に入れますが、この整理には、以下のような疑問があると考えております*11

「楽曲の著作者は基本的な旋律しか決定していない」という前提が常に正しいか

たしかに、作曲者が基本的な旋律しか決定しておらず、その後のアレンジの段階でその他の情報が付加されていくというケースもありますが、そうではないケース(実演を行う人が同時に作曲をしていた場合)も多くあるように思われます。このようなケースにおいては、上記のような整理は妥当しないのではないでしょうか。

作曲者が旋律しか決めていないとしても、アレンジャーも著作者たりえるのではないか

また、仮に「作曲者」が基本的な旋律しか決定していないとしても、アレンジを行った人はいるはずで、アレンジ部分についてはアレンジャーが著作者としての権利を有する(すなわち、このようなケースでは、楽曲部分は作曲者とアレンジャーの共同著作物となる)というのが素直ではないでしょうか*12

「編曲であるが、改変ではない」という理屈は成り立つのか

旋律・歌詞が変更されないカバーアレンジの場合に、「音楽出版社の許可を得るが、著作者人格権を有する著作者(作曲者)の許諾は得る必要はない」という処理をしているということは、カバーアレンジ行為は編曲にあたるものの、著作物の改変ではないという整理をしている可能性があります*13

しかし、このような整理がそもそも成り立つのでしょうか。先に見た通り、「編曲」とは新たな創作性を付与する行為ですから、表現が変更されていることが前提のはずです。そうであれば、これが「改変」にあたらないということには無理がないでしょうか。

「編曲でも改変でもない」という立場は妥当か

編曲行為がなされている以上、改変を否定することが難しいのではないかということは既に述べました。したがって、「許可を取らない」という理屈を立てるためには、「主旋律が変更されていない限り、音楽の著作物の表現は変更されていないから、著作権法上の編曲に該当しないし、改変でもない」という立場が、最も強い主張であるように思われます。

このような整理をされているのが小倉秀夫先生です*14。同論文においては、アレンジにあたって著作者(≠著作権者)の許諾をとることは実務と整合せず、また実際にも不都合が大きいことから、①主旋律が変更され創作的要素が付与されない限り著作権法上の編曲にはあたらない、②主旋律が変更されなければ同一性保持権侵害も問題にならず、仮に主旋律が変更された場合であっても同一性保持権侵害は限定的に解釈すべきである、という整理がされています。

上記論文の問題意識については首肯できる面があります*15。ただ、原則論としては、特にアレンジャーと主旋律を作成した作曲者が同一である場合には、著作者の創作行為は楽曲全体に及んでいるのであって、主旋律のみをことさらに特別扱いすることは正当化し得ないのではないか*16と考えています。このため、主旋律以外が変更された場合であっても、本質的表現は変更されていると考えるのが本筋ではないか(権利侵害の度合いが軽微である行為については、例外規定の適用により処理すべきである)、と考えております。

おわりに

そもそも、従来は、カバー楽曲が作成される際に著作権者の許諾を得ること自体が行われていませんでした。楽曲の著作権は通常の場合音楽出版社に譲渡されて作家の手を離れているところ、カバー楽曲が作成され発表されれば原曲の宣伝にもなりますから、どんどんカバーしてくれて構わない、ということになっていたわけです。

しかし、カバー楽曲の作成に対して編曲の許諾を得ていなかったことを理由に問題となった大地讃頌事件*17が著名となってからは、カバー楽曲について音楽出版社に対する許諾をとることが一般化しているようです。

実務上の取り扱いが上記のように変わったとはいえ、歴史上の経緯からして、カバー楽曲の作成について十分な理論的考察がなされてきたとはいえないのではないかと考えています。現状の利用をことさらに制限するような解釈の方向が望ましくないのはもちろんですが、理屈で飯を食べている以上は、気になってしまう点についてははっきりさせないと気持ちが悪いというのも正直なところです。

 

まとまりがなくなってしまいましたが、記事としては以上になります。脳みそが働かなくなるまでにはこの問題に一定の答えを見つけたいのですが、どう見ても私の手に余る気しかしません。

 

さて、明日のカレンダーは言わずと知れた奥邨弘司先生です。おぼつかないバトンさばきになってしまいましたが、捨てずに受け取っていただければ幸いです。

*1:いつから始まったものか調べたかったのですが、歴史の闇に飲まれてしまい正確な情報はつかめませんでした

*2:学生時代から、先進的な論点を調べる際には必ず先生の論文を参照していました

*3:テーマについて、「法務担当者向け神戸三宮近辺サウナ一覧」とかなり迷ったのですが、そちらは別の形で公開させていただければと存じます

*4:骨董通り法律事務所編『エンタテインメント法実務』119-121頁

*5:「実際にはもう少しゆるくやっている」旨の指摘として、「人の文章への加筆、音楽のアレンジはどこまでOKか ~著作者人格権と『現場の事情』」参照。https://japan.cnet.com/article/35054211/2/

*6:田村和紀夫『音楽とは何か ミューズの扉を開く7つの鍵』でも、三章を割く形で「音楽はリズム・旋律・ハーモニーである」と記載されています

*7:フリードリヒ・ヘルツフェルト『わたしたちの音楽史 上』15頁

*8:小倉・金井『著作権法コンメンタール(改訂版)』320頁

*9:高木啓成『弁護士で作曲家の高木啓成がやさしく教える音楽・動画クリエイターの権利とルール』84-85頁参照

*10:実際に、作曲者は旋律の創作にしか関与しておらず、その後の実演家が行うアレンジによって楽曲が形作られていくという過程をたどることもあります

*11:以下では、歌詞は変更されないことを前提とします。

*12:同旨の整理として、骨董通り法律事務所編『エンタテインメント法実務』119頁参照。

*13:改変ではあるが、同一性保持権侵害の例外規定にあたるのではないかという議論はありえます。加戸守行『著作権法逐条解説』182頁参照。

*14:小倉秀夫「実演における創意工夫としての表現内容の変更の著作権法上の取り扱い」(『論究ジュリスト 12号』238-242頁)

*15:特に、実演家が演奏等に伴って通常行われる程度のアレンジを効かせるといった行為を同一性保持権の問題となるとするとかえって利用が促進されなくなるという指摘や、教育現場におけるアレンジに同一性保持権行使の余地を残すことは38条1項の趣旨に反するという指摘については私も同意見です。

*16:多分、Scar tissueのイントロを弾くときにゴリゴリのファズを踏むとジョン・フルシアンテは怒ると思いますし、Purple hazeのイントロをクリーントーンで弾くことはジミ・ヘンドリックスの表現を変更していると考えるのが素直なように思います。

*17:同事件の詳細については、「カバーソングと編曲権」(安藤和弘『よくわかる音楽著作権ビジネス 基礎編 5th edition』110頁以下)をご参照ください。

山口修習74期に送る一切忖度なし・湯田温泉立ち寄り湯全レビュー

はじめに

 皆様いかがお過ごしでしょうか。私は新人弁護士らしく右往左往したりトラックボールマウスに酔いしれたり*1して過ごしております。

 さて、世間では司法試験の合格発表があり、そのうち運命の悪戯で山口修習に決定する方が出てくるであろうので、

 先日予告しておりました通り、山口は湯田温泉の立ち寄り湯レビュー記事をお送りします。

湯田温泉とは

湯田温泉アルカリ性単純温泉で、肌によく馴染むやわらかい湯が特徴です。
神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、ぢ疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進に効能があるため、昔から多くの人々に親しまれ、そして愛されてきました。

湯田温泉公式HP「湯田温泉の特徴」(http://www.yudaonsen.com/yudaonsen/)より抜粋

 要するに浸かったらトゥルントゥルンになる透明のお湯だということです(アルカリ性なので肌が溶ける)。いわゆる美肌の湯というやつですね。

 あと源泉の温度がクソ熱いです(70度ぐらいあります)。湯田温泉にはそこらじゅうに足湯があるのですが、慣れないと足をつけてられないぐらい熱いです。

 温泉の質には各旅館・施設によって結構バラツキがあります。というのも、他の多くの温泉地と同じように、湯田温泉の施設も、①自家源泉を引いている②自家源泉を所有しておらず、地元共同組合が所有している源泉から湯を引いているの2パターンが存在します。①の施設は②の施設よりも湯の質が良いですし、②の施設の中でも、どの共同源泉からとるかとか旅館同士の力関係とかまあそういうので質の優劣はどうしても出てきてしまいます。

(修習生向け)もうちょっと詳しい説明

 司法修習生にとり、湯田温泉は極めて身近な温泉となります。

 様々な思惑により山口修習に決定した皆さんは、基本的には山口地裁本庁及び山口地方検察庁近辺で生活することになると思われます。そうすると、普段の生活圏からちょうどJR一駅分*2山口駅湯田温泉駅)離れた場所に、湯田温泉の温泉街があります。文字通り隣町に温泉があるわけです。

 加えて、湯田温泉近辺は山口市有数*3の繁華街であり、飲み屋*4、バー、スナック、キャバクラ、ガールズバー*5、その他諸々がここに集結しています。好むと好まざるとにかかわらず、一度は足を運ぶことになると思われます*6

立ち寄り湯レビュー

 本題に入りましょう。ここにいう「立ち寄り湯」とは、事業者が運営している旅館、スーパー銭湯その他の温泉施設(一定の料金を支払うことを引換えに温泉入浴をさせるサービスを提供する施設をいう。)をいいます。定義規定でカッコ書きがついてるとよくわかんなくなって、内閣法制局の担当者の面が見たくなりますよね。

 上記のような定義なので、宿泊客限定のところは基本的に除外しています。くれぐれも「ホテル松田屋*7が入ってない!」とかいってうちの事務所に電話してこないでください。

 なお、古いネットの情報を見てウキウキで訪れた修習生がガッカリしないように、現在休業中・閉業中のところの情報も適宜書きます。

旅館内湯系

ホテルかめ福 夢の御湯

 湯田温泉に根を張る一大ホテルチェーンであるかめ福が運営するホテルかめ福併設の温泉施設。ホテル併設だけど中の施設はどことなくスパ銭っぽい。

 露天風呂で男湯と女湯が共存できるスペースがあったり(家族連れ向け)、内装が日本昔話を元にした感じだったりと、ファミリー層に訴求しようという姿勢が垣間見える。

 現在は本体のホテルかめ福共々改装工事中(改装というか、もう完全に更地にして建替えという感じ)。内装も変わってしまうかもしれない。あのでかい狐と狸の置物面白かったんやけどな。74期の方が山口に来るまでに改装が間に合うかは謎。

 サウナ有り。水風呂はやや温め(湯田温泉は全体的に水風呂が温め)。

ユウベルホテル松政

www.matsumasa.jp

 大元は公衆浴場「松政千人湯」、その後地場に根ざした「ホテル松政」として開業したが、別会社に事業譲渡し現在に至る。

 「千人湯」は現在もホテル大浴場の名前として用いられており、普段は宿泊客にしか開放していないが、年に一度だけ売り出される回数券を持っていると宿泊客以外でも入れる。例年だと、修習生はタイミング的に買いに行くのは厳しい(導入収集中)のだが、今年はスケジュールがずれた関係でいけるかも…? 

 サウナ有り。ちょっと狭いが、温度は割と高め。水風呂はやや温め。

西の都常盤

www.n-tokiwa.co.jp

 女将劇場で有名な温泉宿(私は未体験です)。

 温泉は離れにあり、泉質も良く、離れの建物の雰囲気も格別です。旧家のような廊下を通って外に出ると、庭園の中に温泉がある…といった感じで、リッチな気分が味わえます。

 サウナはなし。

 私はサウナ狂いなのであんまり足を運びませんでしたが、温泉という観点からは一度行ってみる価値ありといえます。

ホテル喜良久

hotelkiraku.com

 ビジホの大浴場が温泉になってる版という感じ。値段は近隣に比べて割と安めで、湯田温泉エリアの銭湯も閉業した(後述します)ので、普段遣いによいかもしれない。

 正直そんなに印象がない。

ホテル梅乃屋

umenoya.net

 上述したかめ福系列の旅館。こちらは現在も営業中。

 特筆すべきは水風呂。20℃台の自家源泉という強みを活かし、水風呂を源泉かけ流しという暴挙に出ている。何を考えてるんだ。「温泉」って漢字の意味知ってる*8

 サウナあり。サウナ後に上述の水風呂に入ると独特の感触が体を包み込む。一見の価値あり。

セントコア山口

www.centcore.com

 公立学校共済組合のホテル。教師利権だ!

 湯田温泉の施設の中では比較的施設がキレイめ。

 サウナあり。湯田温泉で唯一水風呂の温度が20℃を下回っており、きっちりととのいたいサウナーは通うことを強く推奨する(特に夏場)。 

スパ銭系

おんせんの森

onsen-mori.com

 かめ福系列のスーパー銭湯。ジャグジー・電気風呂・サウナ・アカスリ・マッサージ・食堂(からあげ定食がうまい)・休憩所(漫画、Yogibo、ハンモック、マッサージチェア完備)等、スパ銭っぽいものは一通り揃っている。また、比較的夜遅くまで営業しており、夜中に突発的に風呂に入りたくなってもここに行けばなんとかなる。

 このため、立ち寄り湯に行き尽くした修習生が最後に流れ着く先として著名。「どこいく?」「おんせんの森でいっか」ってなりがち。

 鬼滅の刃のコミックスがパクられたとき*9に侠気溢れる対応を見せたことで全国的に注目が集まり、7セットぐらい鬼滅の刃全巻セットが集まった結果、鬼滅専用本棚が誕生している。

onsen-mori.com

銭湯系

梅乃湯

 温泉を引いている銭湯。こじんまりとしているが中々味のある銭湯。サウナもある。

 現在はオーナーのお年もあり、閉業して隣にあるスーパーホテルに吸収されました。かなしいね。

番外編~繁華街から離れる系~

清水湯

 山口のローカルスーパー「アルク」の裏手にある銭湯。

 自家源泉を保有しており、温泉価格でここに入れるのはかなりお得。ミストサウナもなかなか味がある。

翠山の湯

www.yuda-sansuien.com

 東山湯から山越えしたあたりにある温泉。旅館・料亭「山水園」の併設施設です(山水園もかなり良い施設ですので、指導担当弁護士にねだってください)。

 泉質は随一。いい温泉に入りたければここに行くといいと思います。

おわりに

 山口修習に決定した人のうち、たぶん何人かは絶望の淵に沈んでいると思うのですが*10、そんなにつらくきびしいところでもないよ、というのが言いたかったことです。

 温泉以外にも聞きたいことあったらなにかしらでコンタクトとってくれれば*11、話せる限りのことはお話します!よい山口ライフを! 

*1:マジで革命的デバイスなので全デスクワークの民が購入するべきです。自分が買ったのはこれhttps://amzn.to/3qIUi6e

*2:あなたが自分のことを都会育ちだと考えるなら、「JR一駅分」の概念を揺さぶるいい機会です

*3:このとき分母は考慮しないものとする

*4:検察庁という組織はやたら飲み会をしたがり、修習生の代金を一銭も出さない割にお礼参りを強要してきます。未開の部族の風習だと思って割り切りましょう

*5:これらの店は自営業者の交流の場となっています。近世ヨーロッパのサロンみたいなもんです

*6:ここでは書けないエピソードもありますので、聞きたい方は適宜私を捕まえてください

*7:湯田温泉 松田屋ホテル【公式】維新の志士ゆかりの旅館

*8:ちなみに、温泉法上、「温泉」は採取段階で25℃以上であればよいので(温泉法2条1項及び別表一)、法律上はこれも温泉

*9:法学部生・法科大学院生・修習生のみなさんは、窃盗罪の成否について考えてみましょう

*10:私の同期にも目が死んでいる人がいました

*11:Twitterでも何でもいいです

2020年の振り返り

 特に変わったことが起こったわけではないですが、来年の計を立てるという意味も含めて1年を振り返ります。

 

 

誰?

弁護士(73期山口修習)です。同期にはこんな人や、

法廷遊戯

法廷遊戯

 

 こんな人(同地同班同高校)がいますが、

twitter.com

私はいたって普通の司法試験合格者です。

 AI、ベンチャー法務、知的財産法、個人情報保護法、映画、音楽、ガジェット等に関心があります。

 他にも、山口修習の修習生にサウナを伝道する等のマルチな活躍を見せています。

 

司法修習

  山口駅についたときにはさすがに戦慄が走りましたが、山口はとても良い所でした。

 山口ではこんなことをしたり、

f:id:lawyeratthebottom:20201231230128j:image

こんなことをしたり、

f:id:lawyeratthebottom:20201231230150j:image

こんなことをしたり、f:id:lawyeratthebottom:20201231230236j:image

こんなことをしたり

f:id:lawyeratthebottom:20201231230600j:image

しました。夏の写真しかねえな 

 これから山口に行く74期にアドバイスしておくと、山口は車がないとマジで何もできないので、裕福な人が適宜車を買ってください。 73期は山口に実家ある勢と20万円(値切った)の中古車を買ったこへうさんのおかげでなんとかなりました。

 あと裁判所の昼休みが45分しかないので、昼飯を食う店は早めに目星をつけておくと良いです。正直基本的人権が侵害されていると思いますが、4ヶ月余りなんとか耐えてください。

 私はこことか、

味わい処あかぎ
〒753-0047 山口県山口市道場門前2-6-24
5,000円(平均)700円(ランチ平均)
r.gnavi.co.jp

ここに

r.gnavi.co.jp

よく行ってました。 

 あと、隣駅に素敵な温泉街(湯田温泉)があるので、正月休み中に立ち寄り湯やってる全旅館のレビューを書きます。

就職

 兵庫県神戸市の弁護士事務所で一斉登録日初日から執務を開始しています。 

 このようにやっていっています。

今年行ってよかったサウナ

かるまる(池袋)

 正確には昨年の12月に行ったんですけど許してください。

 関西と比べて今ひとつサウナが人口に膾炙していない印象のある東京近辺で、ドラマ「サ道」以降のサウナ需要を一心に受け止める雄。お前が東京サウナのキャプテン・アメリカや。サウナ室に入った瞬間"I knew it."って言った(言ってません)。

 惜しむらくは水風呂の動線がやや悪いこと。あの床面積で逆によくやってるとは思うんですけどね。まあ詰めが甘いのもキャップっぽいってことで

サウナ&カプセルホテル北欧(上野)

 正確には(同上)。

 上野駅近くなのに喧騒から隔絶された完璧な立地。サウナ→水風呂→外気浴の完璧な動線。そしてカリッカリにチューニングされた水風呂の温度。お前が東京サウナのトニー・スタークや。水風呂に入った瞬間"I love you 3000."って言った(言ってません)。

大谷山荘(山口長門

 言わずもがな温泉旅館としてレジェンドなんですが、サウナも最高でした。水風呂とサウナの温度感がうまく調和していないと、ととのいに支障が出てしまい、サウナの醍醐味の99%が失われることがよく知られていますが[要出典]、完全に「わかってる」人が作ってるやつだったので心配は無用でしたね…。

今年買ってよかったもの

ドラム式洗濯乾燥機(日立 BD-SX110FL)

 この世の家事の中で洗濯が一番嫌いなのですが(服が乾くまで待つという工程が森羅万象の中で一番無駄だと思っているため)、全て解決しました。乾燥機能使ったあとの服が臭いなどのレビューが散見されますが個人的には全く気にならなかったです。

 スマホからのリモート機能ですが、「スマホから洗濯機の電源を入れて回し始める」ことはできず、洗濯機側の電源を手動で入れて、リモート待機状態にしておかないといけません。ちょっと期待はずれでしたが、これはパナソニック等の他社製品も同じなので現代技術の限界なのかもしれません。  

 ゲーミングチェア(DXRacer Formula)

  裁判修習中に腰をやったようで、ずっと左尻の凝りに悩まされていたんですが、これでだいぶ楽になりました。家で仕事するのもめっちゃ楽。今後リモートワークになることを見越して買っておいてよかった。こへうさん買う時相談に乗ってくれてありがとうございます。

エルゴノミクスフットレストサンワサプライ

  ゲーミングチェアに座って背もたれに勢いよく寄りかかろうとすると足がちょっとつらいことになるので、あると良いです。もしかしたら私の足が短いだけかもしれません。普通に座っている時も足の疲れが違う。事務所用にも購入を検討しています。

オープンイヤーヘッドホン(Xperia Ear Duo XEA20)

  リモートワーク、オンラインセミナー、オンライン修習等で何かとイヤホンを耳に突っ込む機会が多い昨今、かなり役立ちました。外の音が聞こえるようになっているので、来客を逃さない、音楽を聞きながら他人からの呼出しに対応できる等の効能があります。あなたが思っている以上にかなり便利です。すごい。

来年の抱負

 来年は、ボスより「スタートアップ法務で問題になることは一通りできるようになる」「法分野ではなく業界単位で専門を語れるようになる」ようにと仰せつかっているので、上記2つを目標にやっていきたいと思います。

 とりあえず、 

温泉法―地下水法特論

温泉法―地下水法特論

  • 作者:小澤 英明
  • 発売日: 2013/06/01
  • メディア: 単行本
 

 この辺から始めていきたいと思います。温泉で一山当てたいスタートアップの皆様ご相談お待ちしております。